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第1部:「NYダウを、『析る』」

第2部:「米国経済・株式市場の見通し・ヘッジファンドの思考」


第2部
米国経済・株式市場の見通し・ヘッジファンドの思考 (1/3)
為替相場は実質金利で動く
  

 私はアメリカに住み、アメリカでマーケットに参加しています。そこで、米国の経済や株式市場について、日本の多くの方が誤解しているであろうことを4つほど織り交ぜながら、お話したいと思います。  
 一昔前まで、為替変動には貿易収支など経常勘定の値が大きく影響していました。しかし資本のやり取りが自由化された今では、影響は相対的に小さくなっています。では、為替は何で動くのか。私は実質金利の影響が大きいと考えています。

 実質金利は、名目金利に物価上昇を加味したものです。仮にドルの金利が2%、円の金利が0%だったとします。1年後にドルの価値が2%減ったとすれば、ドルの実質金利は0%になります。ちなみに、通貨の価値が2%減ることは、インフレ率が2%と言い換えることもできます。為替の変動はこの実質金利に連動しています。

そして、実質金利が低いほうの通貨が売られます。アメリカは2008年の金融危機以降、危機から抜け出すために実質金利を低く抑えてきました。その結果、ドルが売られて、ドル円は1ドル=125円から75円まで円高が進んだのです。

 さて、ここで「誤解」の1つ目です。日本では今年1月29日にマイナス金利政策の導入を決定し大騒ぎになりました。名目金利がマイナスになるのは初めてですから、大きな問題でしょう。ですが、大騒ぎするタイミングが違っている。これが「誤解」です。マイナス金利で自分のお金がどうなるかを心配するなら、4年前、実質金利がマイナスになったときに大騒ぎすべきでした。この時点から預金も現金も価値が目減りしていたからです。4年前の時点で既に株などの資産に投資していれば、今頃何らかの収益を得られていたのではないでしょうか。


円安はアベノミクスや黒田バズーカの賜物ではない

 日本では、アベノミクスや黒田バズーカ(日銀の異次元緩和)によって円安、株高が進んだと考えられています。これが2つ目の「誤解」です。ドル円相場で円安が進んだのは、2013年春にドルの実質金利が-1.7%から0%まで急上昇したからです。この年の5-6月にかけてバーナンキ氏が量的緩和政策の縮小を明言したことで、ドルの実質金利が急上昇し、円安ドル高が進みました。それより早く3月頃から他のFRB理事が量的緩和政策の縮小について発言していました。4月の黒田バズーカは、円の実質金利が上がることは止めたけれど、横ばいにするのが精一杯だった。円安の進行には、アメリカの金融政策の影響のほうが大きかったのです。

 これは、今起きていることを理解するうえでも重要です。アメリカでは昨年12月、ほぼ10年ぶりの利上げを実施しました。その後ドルの実質金利は急低下し、今も低い水準にあります。私は3月下旬に日本のテレビ番組で「ドル円相場は1ドル=100円まで円高が進むだろう」と発言しました。その見通しは変わっていません。

 過去を振り返ると、日本の株価はほぼドル円の値動きに連動していることがわかります。景気もドル円に連動していると言えるでしょう。事実、円安が進む過程では、輸出企業が潤い、海外から旅行者が訪れ、海外企業の進出も進み、雇用も生まれました。その結果、日本の経済も良くなった。では、予想通り1ドル=100円になったらどうなるのでしょうか。私はこれまでの為替と株価の連動性を考えると日経平均株価は1万5000円割れまで下がるのではないかと考えています。


市場が怖がっているときこそ投資のチャンス

 さて、アメリカの株はどうなっているのでしょうか。NYダウは、昨年5月19日に1万8312.39ドルの史上最高値を記録しましたが、ここ1年半はほぼ横ばいです。今後の見通しも「上がる」と「下がる」の2つに意見が分かれています。ちなみに、私は「上がる」と考えています。

私は、株式投資に適した環境には、3つ条件があると考えています。ひとつは市場が怖がっているかどうかです。リターンはリスクと表裏一体の関係にありますから、市場が怖がっている状態は、投資環境として非常にいい状態だと考えています。では、現状はどうでしょうか。皆さんから予めいただいたご質問には、「アメリカ経済が本格的なリセッションに入る可能性はありますか」「アメリカ株の暴落はありますか」など、アメリカの経済や株式相場に対して悲観的な見方が多く見られました。これこそが「誤解」の3つ目でもあるのですが、日本の投資家とアメリカで投資をしている我々との見方には、大きなギャップがあるようです。

この誤解には、メディアの影響があるのではないでしょうか。なかでもインターネットやSNSなど無料で閲覧できる情報は、広告収入を得るために、とにかくクリックしてもらわなければいけない。そのためには「アメリカ株は上昇する」より「アメリカ株は暴落する」という記事のほうがいい。自ずから悲観的な情報が多く伝えられ、投資家に浸透しやすくなるのだと思います。

いつかはリセッションが来るかもしれませんが、メディアの影響もあり、その方向にバイアスがかかりやすくなっているのでしょう。いずれにしても、いまは市場が怖がっている状態にあるようです。




(注)買いポジションを保有の場合:配当相当額を受取り、金利相当額を支払います。(ただし、金利相当額の支払い額が配当相当額の受取り額を上回る場合があります。)売りポジションを保有の場合:配当相当額を支払い、金利相当額を受取ります。一部の海外株価指数証拠金取引については、配当相当額は発生しません。
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