もちろん、皆さんが不安を感じる材料もあるにはあります。そのひとつは中国です。昨夏、中国を代表する株価指数である上海総合指数が暴落しました。ただし、それまでに上海総合指数が2.5倍になったことはあまり報道されていません。しかも、それまではほとんど関連性がなかった中国経済と上海総合指数が、あたかも連動しているかのような報道を見て、中国経済に不安を感じる人が増えたのでしょう。中国経済が減速傾向にあることは、上海総合指数の暴落以前からわかっていたことなのに、です。
アメリカ株も、世界第2位の経済大国である中国の経済が減速したことを材料に下げました。ですが、中国の経済や株価はそもそも、アメリカの経済や株価にとって、それほど大きな影響を持つものでしょうか?
それを考えるヒントが、日本のバブル崩壊後の日経平均株価とNYダウの推移にあります。

当時の日本は世界第2位の経済大国で、GDPの規模は米国の3分の2にあたる約4兆ドルでした。ちなみに、今、世界2位の経済大国は中国で、GDPの規模は12兆ドル弱で、やはりアメリカの3分の2程度です。ここから90年代の日本と今の中国とを比較するのはフェアかなと考えています。さて、バブル崩壊で日経平均株価が30%暴落するとNYダウも20%程度下がりました。世界2位の国の株価が下がり始めたので、アメリカも無事ではいられないと考えられたのでしょう。しかし、その後、両国の株価は完全に違う道のりをたどっています。9~10カ月程度は連動したものの、以降は、その国のファンダメンタルズが株価に反映されたと言えるでしょう。今の中国株とアメリカ株でも同様のことが起きるだろうと考えています。
というのは、米国は中国から多くのものを買っているものの、中国はアメリカからあまり買っていないからです。つまり、中国経済が悪化して中国からの輸入が減っても、アメリカは輸出の面ではあまり困りません。むしろ、中国経済が悪化しデフレ傾向になったら、アメリカは中国製品を安く買うことができるので、アメリカ経済にとってはプラスと言えるでしょう。中国に関しては、心理的な影響以外は気にする必要がないと考えています。